ポン太

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 それに、保護猫カフェというのは保護猫を家に迎え入れたい人が行くイメージがある。  猫と暮らせない環境にある私がそういう目的の場所に行ったら、冷やかしだと思われないかな?という不安もあった。 「すみません」  恐る恐る、引き戸を引いて店内に入る私。カフェの中は広々としていて、キャットタワーや猫用のベッドがいくつも置かれていた。  内装も床は畳、壁紙も和風モダンっぽい薄緑色で、外観と同様に和のテイストで統一されている。  床は畳かと思ったら、畳柄のクッションマットだった。猫の爪とぎ防止のためだろう。床には客が使うためか猫が寝るためなのかは定かではないが、座布団が何枚かおかれていた。  そして部屋の隅には空気清浄機が設置されており、猫が何匹もいるはずなのにまったく嫌な臭いはしなかった。清潔さが感じられる空間だ。  しかし店内の奥へと進むには、私の腰くらいまでの柵を乗り越える必要があった。なるほど、玄関のドアを開けても猫が脱走しないように設置されているのだろう。  柵にはロックのかかる開き戸がついていたので、私はロックを外してそっと戸を開け、中へと入る。  足元に段差があり、傍らには靴箱もあった。ポン太を抱きかかえながらも器用に靴を脱ぎ、靴箱に入れる。  入り口付近には、猫もお客さんの姿も見えない。どうやらくの字型の空間になっているようで、曲った先に猫がいるのだろう。
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