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ちゃんと口に出さないと、思いは伝わることなんてほぼない。いくら親しい間柄でも、人の心なんて分かるわけはない。
私はすべてを内に閉じ込めて耐えているうちに、壊れてしまった。精神的にも肉体的にも、文字通り。
お父さんに本心を言えない悠真くんが、少しだけ重なる。
「どこ行ったんだ……猫なんてさらって。事故なんかに巻き込まれてないだろうな……⁉」
青ざめた顔をし、掠れた声で言う悠真くんのお父さん。心から悠真くんのことを心配している。しかし、すれ違ってしまっているふたり。
ーー早く悠真くんを見つけないと。お父さんと話をさせないと。
「とにかく、心当たりがないのならしらみ潰しに探すしかないですかね」
透魔さんの言葉に私は頷く。悠真くんのお父さんは力なくうなだれた。
「申し訳ありません。大変なご迷惑をおかけして……」
「いえ、とりあえずそういう話はあとです。手分けをして探しましょう。雨宮さん、お手伝いお願いできますか?」
「もちろんです!」
そういうわけで、再び静香さんに店番を任せ、悠真くんのお父さんとは透魔さんと共に、悠真くんとポン太の捜索を行うこととなった。
ポン太をおびき寄せるためのおやつや、捕獲した時に入れる用のキャリーケースを持って。
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