ポン太

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 無事に見つけることがまずは先決だ。しかし、見つけたところでこの親子の問題が解決する訳では無い。  その先のことを考えると、昔の自分のことが自然と思い起こされ、胸がちくりと傷んだ。 * 「ねえ! 猫を抱っこした10歳くらいの人間の男の子見なかった!?」  民家の植木鉢の中に、ぴったりと収まっていたメスの三毛猫に向かってそう尋ねる。すると彼女は、少し迷惑そうに片目だけ開けると、 『さっき海の方へ走っていったわよ』  と、気だるそうな声で教えてくれた。「ありがとう!」と、私は早口でお礼を言うと、さざ波が聞こえる方へと駆けていく。  悠真くんがポン太を連れ去ってから2時間ほどが経過し、すでに辺りは薄暗くなり始めていた。暗闇の中での視覚は、人間よりも猫の方が圧倒的に優れている。  自分のこの能力が、猫とのたわいのないおしゃべり以外で、初めて役立てられる気がした。  湊上には結構な数の外猫がいるが、帰郷してからそのほとんどと顔見知りになれたと思う。伊達に毎日散歩しているニート様じゃないのだ。  ここまで何匹かに悠真くんのことを尋ねたけれど、みんな私を見て「ああ、例の言葉がわかる変な人間か」と、警戒する素振りは見せず、『見てないよー』とか『向こうに行った気がする』とか、気安く教えてくれた。
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