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「猫を抱いた男の子見なかった!?」
船着場でうろうろしていた白黒ブチのオス猫に尋ねる。
『おう、なんだいつものねーちゃんか。男の子なら今さっき見たぜ』
漁師からのお恵ものだろうか、魚を咥えながらもワイルドな口調で答えてくれた。
「どこで⁉」
『ここからまっすぐ行ったとこ。波止場の先だ』
「さんきゅー!」
言われた通りに、急いで波止場の方へと向かう。ーーすると。
いた。悠真くんだ。
夜目の効く猫に協力してもらうという、通常ではありえない裏技を駆使したからだろう。波止場の先にいる悠真くんの周囲には誰もおらず、私が一番に彼を見つけることとなった。
砂浜にほど近い波止場。何年かに1度は、水難事故が発生するため、絶対に近づくなと大人は口を酸っぱくして言う。しかし、禁じられれば禁じられるほど、子供は興味を抱いてしまうものなのだ。
そういえば私も小さい頃、ここではよく遊んだ記憶がある。停泊している漁船に無断で入ったり、釣りの真似事をしたりして。
ひょっとすると、悠真くんも同じようなことをしていたのかもしれない。わからないけれど、子供が緊急時の逃亡先に選ぶなら、普段遊び慣れている場所にする気がする。
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