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透魔さんは、扉を開けたキャリーケースを地面に置き、私に目配せをした。
私は抱っこしたポン太を中に押し込むように入れる。『にゅーるはー?』と非難がましく言うポン太に、「あとでおやつあげるからね〜」と会話ができることを悟られない調子で言う。
そしてキャリーケースの扉を閉めると、私はこう尋ねた。
「なんでなかなか出てこなかったんですか?」
透魔さんが出てくれば、基本的にいい子な悠真くんはすぐにポン太を返した気がするが。まあ、時間があったおかげでお父さんと和解できたから、結果的には最後まで出てこなくてよかったけれど。
「あなたが猫を幸せにできる人間か見ていました」
「はあ?」
まったく意味がわからない。なんで私の話が出てくるのだろう。今大事なのはポン太と悠真くん家族のことじゃないか。
「まあ最終的な判断は、ポン太が無事悠真くんの飼い猫になってからですかねえ」
「は……? あれ、っていうか、ポン太を別な方とトライアルさせるんじゃなかったでしたっけ」
最終的な判断という意味はもちろん分からなかったけれど、悠真くんの飼い猫という話という方が気になって、私は問う。
悠真くんとポン太の仲の良さを目の当たりにして忘れかけていたけれど、ポン太は別の人にも気に入られていたはず。
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