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「悠真くんが飼えそうなら、その方にはお断りしますよ」
「え、どうしてですか?」
ニコニコしながら言う透魔さん。彼にとっては、ポン太を可愛がってくれるなら誰に飼われてもいいはずじゃないだろうか。まあ、私は悠真くんに飼って欲しいけれど。
「ポン太は悠真くんに懐いています。他の誰よりも。家庭環境的に無理そうだから他の方を検討しましたが……。悠真くんが飼ってくれるなら、それが一番ですよ」
「ーーはあ」
もちろん私もそう思っているけれど、ポン太の気持ちを透魔さんがここまで分かっていることに、少し驚いた。猫と会話ができる私くらいしか、わかっていないかと思っていたから。
毎日たくさんの猫と戯れている、保護猫カフェの店長なら、それくらいお安い御用ということだろうか。
透魔さん、いつも穏やかな笑みを絶やさないけれど、なんだか掴みどころのない人だな。ちょっと猫みたいだな、と思う。
そしてやはりその微笑を浮かべたまま、彼はこう言った。
「家庭環境の問題は、恐らく解決しましたしね」
ひとしきり泣いたのか、悠真くんはお父さんを見上げて、照れくさそうな顔をしていた。お父さんは、悠真くんの髪を撫でながら愛おしそうに見つめている。
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