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「うん、ポン太と仲良くするよ」
「よろしく頼むよ」
「悠真ー! 行くぞー!」
猫又の出入口付近からお父さんに呼ばれ、悠真くんは踵を返した。いろいろあったけれど、ポン太は引き取られたし、悠真くんの家庭の問題も解決して、すべてが良い方向に転がったなあ。
ほんわかしながらそんなことを思っていると。
「お姉ちゃんもずっとひとりで寂しそうだから、友達とか彼氏とかできるといいねー!」
お父さんがお店から出たあと、それに続こうとした悠真くんが、屈託ない笑みを浮かべながらそう言った。そして私が「えっ」と思っている間に、彼は退店してしまった。
悠真くんに一切悪気はないだろう。いつもひとりでいる私を心から案じているに違いない。透魔さんがちらりと私を見て「ふっ」と笑った。
え、いや、その。そりゃ恋人はいませんけど。友達は何人かはいるんだけどな……。
あ、でも東京で知り合った人とはなんとなくもう連絡取りづらいし、湊上の友達も仕事が過去の社畜生活のせいで今じゃほぼ往信不通だわ。
私、本当に孤独で寂しい女なんじゃ。
友人も恋人もいなければ、仕事もない。人と関わりのないニート。ーーまずいまずい。
失業保険ももうすぐ切れるし、早く仕事くらい探さないと。でも東京に戻るか宮城で再就職するかもまだ決めていない。どうしてもまだ具体的なことを考えるほどの気力が湧かない。
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