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いや、でも本当にそろそろまずいよなあ。
なんてことを考えて、ひとり暗澹たる気持ちになっていると。
「とりあえずポン太が引き取られて良かったですね」
いつも通り、柔和な感情の読めない笑みを浮かべて透魔さんが、どこか可笑しそうに言う。
「とりあえずは。そうですね」
脱力してテーブルに突っ伏していた私は、顔を上げた。
店内はいつの間にか、他のお客さんはいなかった。壁にかけられた、猫の尻尾がゆらゆらと揺れる時計を見ると、閉店時間の17時を回っていた。
アルバイトの静香さんも、ボランティアの人も、今日はもう帰宅したらしく、店内には私と透魔さんと、うろうろしている数匹の猫しかいない。
部屋の隅で、猫又に最初に来た時に見かけた銀にも見える煌びやかな白い猫が佇んでいた。
長めの毛は今日もふわりふわりと膨らんでいる。じっと私を見つめているので、猫に気圧された気分になる。
閉店時間過ぎてるのに、帰らなくていいのかなあと思いつつ、透魔さんがそれを促してこないので、まあいいか、と思って甘えてみることにした。
「ポン太を連れ来てた雨宮さんも、肩の荷が下りたでしょう」
「そうですね」
「最後に、ポン太なんて言ってました?」
「ーーああ。あんまり人間の世話になるのは好きじゃないけど、悠真ならいいかーって、言って……まし……た……⁉」
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