ポン太

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「だから、隠さなくてもいいんですよ」  透魔さんがにっこり笑って言う。 「なるほど、ですねえ」  私は心底感心して、呆けた表情でそう言った。そしてその時、銀の猫のふっさふさの尾が、二股に分かれていることに気づいたのだった。  妖怪になった猫は、尻尾が割れる。そんな昔からの日本の伝承を、私はふと思い出した。 *  銀色の猫は銀之助、という名の猫又ーー猫の妖怪だそうだ。  透魔さんの話では、銀之助は元々人間にも化けられる高位の妖怪だったけれど、ある禁忌を犯してしまったため、猫神に力の大半を奪われ、ほとんどただの猫になってしまったらしい。  人語が喋れることなど、多少の能力は残っているそうだけど。  そして、猫神は力を失った銀之助にこう告げた。  ーー力を取り戻したければ、1匹でも多くの猫に、幸せな猫生を送らせること。 「それで、この保護猫茶房猫又を開いたというわけですか?」  私の問いかけに透魔さんが頷く。 「現代で手っ取り早く猫を救うには、保護猫活動が一番ですからね。まあ、猫の幸せなんて千差万別で、人間に飼われることが一概にいいとは言えませんが。それでも、住と食が保証されている環境は、猫にとっては魅力的ですから」 「なるほど」
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