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「はあ……」
「だから、ここは17時に閉めて、静香さんやボランティアさんも同じ時に帰さなければなりません。しかし、閉店後にひとりで店内清掃や猫達のお世話がかなりの重労働でしてね」
「それを、ふたりの正体を知っている私にやって欲しいと?」
「ご明察です。最初に会った時に、猫と話ができる人なら、恩を売っておこうと思ったんですよ。何かの時に助けてくれそうな気がしたので。無職と知った時は非常に嬉しかったです。もうここで働いてもらうしかないと思いました」
「……はい、無職でございます」
無職を喜ばれて、少し複雑な気分になる。
「ここではアルバイトとして雇うことになるので、正社員としての次の職が見つかるまでの繋ぎで構いませんから。私としては貴重な人材なので、長くいてほしいですけどね」
透魔さんはにんまりと、笑みを深くする。
猫と話が出来る、非現実的な力の持つ私なら、さらに非現実的なふたりの秘密を知っても恐らく口外せずにいるはず。
だから、働き手として欲しくて、ポン太のことで恩を売ったというわけか。
ポン太誘拐事件のあとに、透魔さんが言っていた「あなたが猫を幸せにできる人間がどうか見ていました」と言っていた意味を、ようやく理解する。
ずっと私の様子を見て、戦力になるかどうか、猫にとっていい人間かどうかを、透魔さんは見定めていたというわけか。
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