ポン太

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「小間使いが増えたんならこちらとしても助かるな」  尻尾をぱたっと振って、偉そうに銀之助が言う。テーブルの上で揺れたふさふさの尾は、ふわりと柔らかそうだ。  オッドアイのつぶらな瞳。超絶可愛らしい見た目に相反する、不遜な態度。そしてもっふもっふの全身。  ダメだ。すべてがツボだ。 「もう耐えられない! 私!」  欲望のタガが外れた私は、勢いよく銀之助に接近した。 「え⁉  な、小娘っ⁉」  私の突然の行動に、びくりとする銀之助だったけれど、逃げる余裕はなかったようだった。私は銀之助の両脇の下をがしっと手で掴み、抱っこする。  そして頭や背中、首筋などをひたすら撫でる。なるべく猫が嫌がらないポイントにはしたつもり。腹毛に顔を埋めたい欲求は非常に高かったけれど、すんでのところでそれは堪えた。正直偉いと思う。 「あああ! ふわふわすぎるっ! かわいいかわいい!偉そうなとこも猫っぽーい!」 「なっ⁉ 小娘! 私を誰だと思っている! 高位の妖怪だぞ⁉ 本来ならお前など!」 「きゃああ! もう生意気! だけどそこがいいー! 肉球もぷにぷにー!」 「こらああ! お、おい透魔! 助けろっ」  私の過剰な愛情表現に、透魔さんに救いの手を求める、銀之助だったが。
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