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男はそう言い捨てると、私に背を向けて去ってしまった。
ーーどうしよう。保健所に連れていくなんて絶対にできない。猫好きだが、重度の猫アレルギーの母がいるうちでは飼えないし。
『話は終わったの? ねえ、おやつ持ってないの?』
いつの間にかポン太は私の足元に擦り寄っていて、つぶらな瞳で私を見上げていた。本猫がまったく話を理解していないのは不幸中の幸いかもしれない。
どうしたらいいのだろう。この辺の人はみんな猫が好きなのに。少し離れた場所にでも置いていこうか。
いや、でも猫には帰巣本能がある。ポン太はこの辺を気に入っているらしいから、数日で元に戻ってきてしまうだろう。あの男のテリトリーでもあるこの区域に。
猫を保護して里親を見つけてくれる人、いないかなあ。ネットで募ってもすぐに見つからなそうだし、その間にあの男に保健所に連れていかれてしまいそうだ。
猫を、保護……。
「そうだ!」
私はあることを思い出し、思わず大声で独りごちた。
『な、なんだよう。びっくりした』
ふわふわの尾をボワッと爆発させ、耳を少し寝かせて不満そうな顔をするポン太。
あるじゃないか、猫を保護する施設が。保護猫カフェという、素晴らしい場所が。
そこに行けば。そこなら、なんとかしてくれるかもしれない。いや、してくれるに違いない。してください頼むから。
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