Ⅱ. 夕焼けのブランコ

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ミルカはこの中でも一番の年下メンバー まだあどけなさを残しながら 長い黒髪は大人っぽさすら感じさせる。 泣き虫なのだろうか? ちょっとした事での感情の起伏が激しい 先ほどもスタッフに注意されて涙目になっていた。 慌てて僕がスマホを水中から取り出し、 動作確認すると何事もなく作動した。 「防水機能半端ないね、ほら全然大丈夫!」 ハンドタオルでしっかりと拭いたスマホを ミルカに手渡す。 「ありがとうございますー!」 喜んだミルカだったが… その直後、着信アドレスを見たミルカが 一瞬凍りついたような表情になったのを 僕は見逃さなかった。 その後、僕がグループのリーダーである サヤカとスタッフを交えて 打ち合わせしていると再びやって来たのは ・・・ミルカだ。 「サヤカさん、もう私帰りたい。あの事件…アカリちゃんの…覚えてますよね」 「アカリな、私も悲しいけどこれはあの子のためにも私らが…」 実は数ヶ月前、この企画に参加するのを 楽しみにしていたメンバーの一人 アカリが何らかの事件に巻き込まれ ロケの下見に行った先で 全身血まみれの状態で見つかった、 既にその時点で命を落としていたらしい。 この事件はまだ表沙汰に公表されていない 超極秘案件だ。 僕もこの日、この場で初めて その事件を知ったくらいだから。 何か報道できないような社会的圧力が かかっているらしく 実はアカリが生きていた頃にも 匿名で彼女宛に脅迫や怪文書めいたものが 届いていたらしい。 それはアカリへの脅迫まがいの件と 今回の事件が何らかの関係があるのでは? と、警察は全て非公開で捜査をしている。 更にこの件が世間に公表出来ないのは 事件直後から警察が到着するまでの短時間で アカリの遺体が現場から忽然と消え 依然その行方がわかっていないからだ。
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