Ⅱ. 夕焼けのブランコ

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どうやってこの場所に辿り着いたのかすら 覚えていない 気づけば僕は "PHENIX HALL" と書かれた大きな看板の下に 立っていた。 あと数分もすれば歓喜と熱狂に包まれた 音楽イベントが始まるこの会場に ゾンビが現れて人を襲う、などと言う 前代未聞の事件が起きようとしている 何とか未然に防がねば… だがしかし、こんなことを話して 誰が信じてくれるだろう? サヤカ…彼女しかいない! 僕は本能的にそう察知した。 スタッフから渡されていた許可証を首から下げ 会場内を歩き回ってサヤカを探し ようやくステージ裏でリハーサル中の サヤカの姿を見つけた。 「兄さん!」 「サヤカちゃん、信じてもらえんやろけど…聞いてほしいことが…」 ミルカの死、薬の投与、 そしてカナコの事… 信じてもらえないのを承知の上で 今に至る事情を話すと この受け入れがたい話を サヤカは瞬時に理解した。 「遂に『その時』が来ましたね…もう私も準備出来てんねん」 サヤカの表情が一変した。 これまでのアイドルらしい清楚な笑顔ではなく これから戦地に向かう 兵士の様な凛々しい表情へと。 どういうことだ? そう言えば、カナコはさっき 「あんた生きてたんか?」と まるで僕を知っているような事を言っていた。 カナコとは誰なのだろう? 半信半疑でその事をサヤカに尋ねてみる。 「兄さん、まだ全部思い出せんかも知れへんけど…時間ないから短めに話すね」 サヤカが物静かに語り始める。 そしてその内容を聞くに連れ 僕は驚きを隠す事ができなかった。
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