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和人様は眠るように逝ってしまった
「和人様、目を覚まして下さい」
何度呼んでも、もうあの優しい眼差しを向けられることはない
俺は柄にもなく涙が止まらない
まだほのかに温かい手を頬に寄せ
和人様のぬくもりを感じる
「おい、どけ」
後ろから強引に引っ張られ、後ろに尻餅をついてしまった
俺を引っ張った相手は
和人様を見ても表情一つ変えず、最初に発した言葉は 「やっと死んだか」だった
その心ない言葉に
俺は悲しみと怒りに満ちた顔で相手を睨み付け、咄嗟に
「お願いですから出ていって下さいっ」
と声を荒げた
すると、あの人は俺のことを鼻で笑い
「今日だけはお前のわがままを聞いてやろう
せいぜい最後の別れを楽しむといい」
そう言い残し出て行った
あの人は和人様を傷付けて
何もかも奪っていった
和人様が唯一、手放さなかったのは俺だけ…
あの人が俺を和人様から
引き離そうとする度に
和人様は優しく俺を守ってくれたんだ
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