新しい主人

2/8
1192人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
和人様は眠るように逝ってしまった   「和人様、目を覚まして下さい」 何度呼んでも、もうあの優しい眼差しを向けられることはない 俺は柄にもなく涙が止まらない まだほのかに温かい手を頬に寄せ 和人様のぬくもりを感じる 「おい、どけ」 後ろから強引に引っ張られ、後ろに尻餅をついてしまった 俺を引っ張った相手は 和人様を見ても表情一つ変えず、最初に発した言葉は 「やっと死んだか」だった その心ない言葉に 俺は悲しみと怒りに満ちた顔で相手を睨み付け、咄嗟に 「お願いですから出ていって下さいっ」 と声を荒げた すると、あの人は俺のことを鼻で笑い 「今日だけはお前のわがままを聞いてやろう せいぜい最後の別れを楽しむといい」 そう言い残し出て行った あの人は和人様を傷付けて 何もかも奪っていった 和人様が唯一、手放さなかったのは俺だけ… あの人が俺を和人様から 引き離そうとする度に 和人様は優しく俺を守ってくれたんだ
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!