27. ミルクティー

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同じクラスになって隣の席になり ある日を境に僕と話すようになった浩子 ただそれだけのことだったのに 今ではこうして二人で出かける機会が増え 気兼ねなく他愛もない話を出来る空気感すら 芽生えている。 もう臆することはないはずなのに 僕にはその先に踏み込む勇気は やはり、まだなかった。 とは言え、 今の宙ぶらりんな関係を壊すことを恐れて 曖昧な態度を取り続けるのは 卑怯だとも思った。 でも一歩先へは踏み出せない、 そんな葛藤の狭間で常に気持ちが揺れていた。 「タカムラってさ」 「何?」 「時々とてつもなく不安そうな顔するよね」 「そう?」 「うん」  「たまに思うんだよね」 「何を?」 「ある日突然、これまでのことが嘘になったらどうしよう、って」 「これまでのこと?」 「ほら、今は毎日フツーに楽しく過ごしてるけど、そんな当たり前なことが突然終わったら、みたいな」 「うん、わかる…わかるよ」 意外だった。 「何言ってんの?」って茶化されるのかと 僕は思っていた。 「アタシだってそうだもん…同じだよ」 「だよね、だから尚更…」 「毎日楽しくないと、ね」 「今は、どう?」 「楽しいよ」 「よかった」 「バカだね、そんなの気にしてたの?」 「意外と小心者だから」 「ふふっ、だよね、わかる。あ、ねえ、喉乾かない?」 「そうだね、じゃ、そこの自販機で…あっ!」 「どうしたの?」 「残念なお知らせが、残金150円なり」 「じゃ、アタシの分だけね」 「何でやねん」 「ミルクティーがいい」 「俺は炭酸が飲みたいんだよ」 「あー、もう!めんどくさいな」 浩子は僕から小銭を取り上げて 自ら自販機へと投入した。
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