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1時間、2時間…
待てども待てどもコウはここには来なかった。
「嫌われちゃったかな?それとも…『バレた』のかな?」
ふさぎこんだ表情で浩子は
店を出る決心をした。
「結局、誕生日ってこんな・・・だよね」
ふと独り言を洩らした浩子の目から
大粒の涙がこぼれた。
「アタシはきっと幸せになっちゃいけないんだ」
気が付けば浩子はあの日
コウに送ってもらった土手の上に来ていた。
「あいつなら…タカムラなら、全部信じても大丈夫だって思ってたのに」
もう帰ることしか
浩子に選択肢は残されていなかった。
涙で頬を濡らしながら歩く浩子の
その少し向こうを
コウは気づかずに浩子を探しながら
全速力で走り抜けて行った。
こうして同じ場所に辿り着きながら
すれ違った二人は
この日、会うことはなかった。
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