20. 掛け橋

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こうして浩子は コウの後ろの席に陣取ることになった。 まずは性格を試してみよう アタシは、いつもの悪い癖で前の席の人 よく怒らせてるからなぁ。 まずはそれで… この程度で怒ったりしたら やっぱり「そんなヤツ」なんだってわかるし。 浩子は試しにいつもコウの椅子の後部に 何度も足を乗せてみたが コウは怒るどころか気にする素振りすら見せず 穏やかなままだった。 プリントも 振り向かずに渡してきた時は受け取らなかった… すると嫌な顔もせず後ろを向いて 直接手渡してくれた。 あれ?コイツ、いいヤツなの? ただのお人好し? それともバカなの? に、しては 馴れ馴れしく話しかけてきたりもしないし… 警戒されてんのかな? 煙たがられてんのかな? こんな感じで浩子の「査定」は続いた。 アタシが色々試してることわかってるのかな? それとも… 「あ…!」 そんなことを考えていた浩子は つい消しゴムを落としてしまった。 それもコウの席のすぐ前に。 コウは気づかないのか 全く拾う素振りも見せない。 やっぱりね…ま、そんなヤツなんだね そう思った浩子はハッ!とした。 この人は自分の消しゴムを落とした時も 授業が終わってアタシが席を離れるまで 絶対に拾いに来なかった。 もしかしたらいつも愛想のない アタシに気を遣って敢えて拾わないんじゃ? 仕方ないな、ちょっと仕掛けてみるか… 「ねえ…」 「・・・」 「ねえ、消しゴム拾ってくれない?」 初めて浩子からコウに声をかけてみた。
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