20. 掛け橋

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浩子の消しゴムを拾ったコウは一言 「かわいい消しゴム、使ってるね」 この瞬間、浩子の鼓動はこれまでになく 激しく波打ち始めた。 やだ、アタシ 何でドキドキしてんの? らしくない、らしくないよ アタシがこんな気持ちになるなんて。 この日、浩子はこれ以上 コウと話すことは出来なかった。 話したくなかったのではない、 話せなかったのだ。 この日以降、浩子はコウと 挨拶程度の会話をするようになった。 そして気づけば クラスで唯一、会話をする男子となっていた この状況、悪くないかも…本心はそうだった でもそんな浮かれた気持ちは長くは続かない アタシは美月のためにこいつを査定してるんだ、 ここでアタシの気持ちが動いたりしたら 元も子もなくなってしまう。 それでもそんな思いとは裏腹に 浩子は自分の感情に抗うことが 出来なくなりつつあった。 教室で仲良く話したり 遂には二人で出掛けるようにもなった。 美月はこんなアタシのこと怒ってるかな? 自重しなきゃ… 美月のために、と言う大義名分で 何とかそのバランスが保たれていた。 浩子は一人 葛藤と戦い続けていた。 「タカムラ…アタシ、どうしたらいいの?」 全部あんたが悪いんだからね、 何で、何で、悲しくもないのに イヤなことがあったわけでもないのに こんなに泣かなきゃいけないの? そりゃ…「あの頃」よりはマシだけどさ 知らず知らずのうちに流れる涙を拭っていると 「浩子ー!電話よ!」 下の部屋から母親の呼ぶ声が聞こえた。 今は誰とも話したくない… 浩子は聞こえないふりをして ベッドに潜り込んだ。
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