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深夜12時過ぎのことだった。
「浩子、電話よ。壬生川さんから」
家に帰っても止まらない涙と
空虚さに襲われていた浩子は
母親の声すら苦痛に感じながらもこう答えた。
「いないって言ってよ」
「こんな時間にいないなんて断れないじゃない。
壬生川さん、浩子が話したくなるまで
受話器上げて待ってますって言ってるのよ」
「もう、何なの!由里は…こんな時間に」
浩子は仕方なく受話器を取った。
「どうしたの?由里」
「あ、浩子?ごめんごめん」
「こんな時間に何の用?」
「あ、実はね何か私、責任感じちゃったから、連絡入れなきゃなって思って」
「何のこと?」
「今日、会えてないんでしょ?高村くんと」
「え、何で、そんなこと知ってるの?」
一通り、由里の話を聞かされた浩子は
電話を切るなり
「はぁ…」
大きくため息をついた。
そこには落胆と安堵の思いが交錯していた。
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