22. 安堵

9/9

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
「本気で謝ってくれたから…」 「うん」 「今日は許す」 「よかった」 僕はホッと胸を撫で下ろした。 一度は頓挫しかけたが、これでまたこの先も この曖昧な関係は保たれるわけだ。 雨降って地、固まったのだろうか? そもそも付き合っているか、そうでないかの ボーダーラインが僕にはわからない。 浩子の気持ちは計り知れない部分があるし これで付き合ってる、と思えるのなら 例え浩子がそうは思っていなくとも それはそれでよかった。 僕にとってそんな線引きは無用で まるで意味のないことのように思えた。 あの日の夜、由里と話した後 ハッピーエンドにならないであろう結末を憂いて 浩子が人知れず泣いていたことなど 何一つ知らない僕は勝手に浮かれていた。 「和解」の後にも関わらず 浩子の表情に一瞬 (かげ)りが浮かんだことなど気に留めることもなく 僕は浮かれて4時間目の授業を受けていた。 男子の内面の構造はどれだけ単純なのだろう… おそらく浩子は内心呆れていたはずだ。 そして浩子は浩子で自分を責めていた。 「言えなかった…これまでのこともこれからのことも」 二人の心はそれぞれ二つの思いで 揺れていた。
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加