23. 12月…街は

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そして 僕の「執行猶予」解除の日が迫り 誕生日の時のようにまた僕の方から 浩子に切り出さなければいけないだろうと タイミングを計っていた12月半ばの事 「ねえ、どこに連れてってくれんの?」 その話題を先に口にしたのは浩子の方だった。 「意外だな」 「何が?」 「浩子からその話をしてくるなんて」 「クリスマスくらいおいしいもの食べたいじゃん」 「それって?」 「無料(ただ)で、ね」 「やっぱり」 こんな事を言いながらも 浩子はいつでも全額を僕には支払わせない。 これまでも会計の時は こっそりと僕に小銭を渡してくれた。 僕が断ると 「いいから、アンタお金ないんでしょ」 そう言われると返す言葉もなかった。 女子はいつもお金を出させる男子なんて 決して好きではないだろうから 男子としてはそこに甘えていいものだろうか? と、少し凹みながらも それはお金ではなく 気持ちの部分で理解してくれてるのだ、と 思うようにしていた。 こんな暗黙の了解が許される関係は 正直、男友達にもなかなかいない。
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