27. ミルクティー

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帰り道、雨はすっかりあがっていた。 夕食の後、立ち寄った喫茶店では 満腹だったこともあり 食べるよりも話す時間の方が長かった。 お互いの昔話や幼い頃の話 これまで知らなかった浩子のことを知れたのは 何も知らないもどかしさに 苛立っていた自分の心情が 解きほどかれる想いだった。 「浩子って、男子と話さないイメージがあって俺に話しかけてきた時は正直びっくりしたね」 「だよね、アタシ全然話さなかったもんね」 「何か男子にイヤな思い出でも?」 「…あるよ」 「そうなんだ」 「聞かないの?」 「昔のことは、特に辛いことは…思い出したくない、かなぁ?って」 「優しいんだね」 「よく言われる」 「…バカだけどね」 「よく言われる、それ余計だけど」 「ふふっ…じゃ、タカムラは?」 「え?」 「昔…」 「ま、色々あったね」 「失恋?」 「ストレートだなぁ、フラれそうなタイプに見える?」 「かわいそうなくらいに」 「ま、当たらずとも遠からずかな」 「フラれてる」 「フラれてない!」 「フラれたな?」 「フラれてない!」 「ふふっ、ムキになってる」 「何だよ」 「ま、色々あるから」 「浩子も?」 「お互いに、だね、きっと」 「またさ、話せる時が来れば…」 「だよね」 多分、ではあるが浩子は 何かに対して臆病になっているのだろう。 まだその核心をつくのは早いのかなと この時僕は思った。 これまでの経験上 ここで踏み出して自爆してたように思う。 だから僕は 物事を急ぐタイプではないんだ、と 言い聞かせることで自制してきたのも また事実だ。 それは言い換えるなら 結論を先伸ばししてるだけなのだろう、 浩子への思いも含めて。
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