28. 薄光皓々

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二人の帰り道、会話が途切れた時に 浩子はふと思った。 アタシ、何してんだろ? あのミルクティー・・・ あんなことして タカムラに嫌がられなかったかな? だってびっくりしてたもんね、あの表情は。 嫌われるのなら、それはそれで後悔もないし でも、ここまでの帰り道はずっと話してたし。 大丈夫かな? 伝わったかな? きっとアタシも タカムラと同じ気持ち…なんだよって それなら、もうアタシは何も… 「今日は楽しかったね」 沈黙を破ったのはコウだった 一人気まずさを感じていた浩子は 少しホッとした。 「…うん、まぁ…ね、食べたよね、かなり」 「二人とも」 「特に最初のお店では、ね」 「浩子…」 「何?」 「来年も同じクラスかな?」 「ま、今の成績なら…二人とも繰り上げで進学クラスじゃない?」 「じゃ、また来年もよろしくだね」 「気が早いよ、まだ3学期もあるし」 「で、さ…」 「…な、何?」 「また…」 「…また」 二人ほぼ同時に同じ言葉を発した。 「先に言っていいよ」 「タカムラから言ってよ」 「また明日、ね」 「うん、ま…また…」 「どした?」 この直後、浩子から意外な一言が飛び出した。 「また…行こうね、タカムラ」 「うん、そうだね」 「また…誘ってね。ほ、ほら、アタシってこんなだからさ…」 「自分からは…言い出せないタイプ?」 上目遣いに浩子は小さく頷いた。 「うん、また行こ」 「楽しみだね」 僕たちの頭上には満月が皓々(こうこう)と照っていた。 それはまるで今の僕たちの想いのように 繊細で今にも消えてしまいそうな薄光(うすあかり)だった。
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