43人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
二人の視線の向こうから
誰かがこちらへ向かって歩いてきた。
「誰?こんな時間に」
「誰だ?」
「え…谷口?」
暗闇の中から現れた人影
それはトモキだった。
「何だよ?トモキかよ」
「・・・」
トモキは一言も発することなく
その場から走り去っていった。
「何なんだ、あいつ?」
「ほんと何なの?人ん家の近くで」
あまりにも突然のことに
二人とも不意をつかれたものの
僕にとってトモキの登場は
この日過ごした時間の中で
記憶にとどまるほどの「事件」ではなかった。
「じゃ、ここで」
「うん、またね」
しかし家の中に入った浩子の顔からは
血の気が引いていた。
「まさか谷口、また何か妙なことを…?
まさか…」
「あの日の記憶」が
浩子の頭の中をぐるぐる駆け巡った。
最初のコメントを投稿しよう!