28. 薄光皓々

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二人の視線の向こうから 誰かがこちらへ向かって歩いてきた。 「誰?こんな時間に」 「誰だ?」 「え…谷口?」 暗闇の中から現れた人影 それはトモキだった。 「何だよ?トモキかよ」 「・・・」 トモキは一言も発することなく その場から走り去っていった。 「何なんだ、あいつ?」 「ほんと何なの?人ん家の近くで」 あまりにも突然のことに 二人とも不意をつかれたものの 僕にとってトモキの登場は この日過ごした時間の中で 記憶にとどまるほどの「事件」ではなかった。 「じゃ、ここで」 「うん、またね」 しかし家の中に入った浩子の顔からは 血の気が引いていた。 「まさか谷口、また何か妙なことを…? まさか…」 「あの日の記憶」が 浩子の頭の中をぐるぐる駆け巡った。
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