29. 離脱

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それは突然の報告だった。 「おいトモキ、バンド辞めたいってどういうことだよ?」 「いや、あのさ、もう春から受験生だろ? 親がうるさいんだよ」 「他のヤツらには話したのか?」 「いや、まだ話してない、コウから伝えてくれないか?」 「何言ってんだよ、俺の権限で決められるわけないだろ、それならみんなの前で話せよ」 「あ、あとさ…田仲とはうまくやってるみたいだね」 「別に付き合ってるわけじゃないけど…何か引っ掛かるんだよな、お前の態度が」 「だからオレは前に話した通り…田仲には」 「じゃ何でさっき…ま、どうでもいいや」 「それじゃ後はよろしく…」 「おい、ちょっと待てって!」 クリスマスイブ 浩子を送って帰ったばかりの僕に かかってきた突然の電話はトモキからだった。 あまりにも不可解だった。 何故あの場にトモキが居合わせたのか? しかもこれまで何の問題もなく続けてきた バンドを離脱したいと言ってきた。 その本当の理由が 親の苦言や学業だとはとても思えない。 僕の知らないところで 何かが起きているのでは? そんな胸騒ぎがした。
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