30. 悪い噂

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「よっ、久しぶり」 それは祥二だった。 「出たな裏切り者!とっとと抜け駆けして彼女作りやがって」 「久しぶりに帰り道で会ったのにあんまりだな、 いやしかし楽しそうだな…辛気くさい男子が揃いも揃って」 「祥二、どうもシバかれたいらしいな」 「いやいや勘弁してくれよ、モテない軍団」 「おい!やってしまうか?」 「冗談だよ!独り者は気持ちの余裕がないなぁ」 「あれ?今日、石塚さんは?」 「あ、年末は親の地元に帰るからって。山口に行くんだってさ、これから」 「お正月を一人で寂しく過ごしやがれ」 「ひどいな、せっかく一緒に帰ろうと思ったのに…あ、コウ、後からちょっといいか?」 「どした?」 祥二と僕は帰り道が同じだった。 テルと純也の背中を見送りながら 祥二はこう言った。 「話しときたいことがあるんだよ、怒らずに聞いてくれ」 「何だよ、急に真面目な顔して」 「お前、あの田仲と付き合ってんのか?」 「いや仲はいいけど別に付き合ってるわけじゃ…」 「ならよかった、悪いことは言わない、あの女はやめとけ」 「え?何でだよ?」 「由美子から聞いた話だけど…」 「何?」 「アイツは少し前までヤバい連中とつるんでたらしい」 「ヤバい連中?」 「田仲の元カレはとんでもないワル、だそうだ」 「な、何だって?祥二!それ、どういうことだ!」 僕の表情が変わったのに気付いた祥二は なだめるように続けた。 「怒る気持ちはわかる、仲よさそうだもんな。でも噂、じゃないらしいんだ。由美子は田仲と同じ中学だし昔のこと色々知ってるみたいで、その…ただ…」 「ただ…何だよ?」 「そう言うヤバいヤツらってのはさ、ちょっと…」 「何だよ?」 「俺らにも火の粉がかかる…って言うか、さ」 「浩子は今も関わってんの?そいつらと」 「いや、それはわからない、でも過去にそんなことがあったんなら…」 「オレは気にしないよ」 これまでは付き合っていた相手がいるなら その女子には関心を持たないように、と言うか 気にもなりはしなかったが 今や、浩子のこととなれば話は別だ。
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