30. 悪い噂

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しかもそんな現実離れした噂を真に受けて 浩子から距離を置くことなど この状況ではとても考えられない。 「と、とにかくさ、面倒には巻き込まれないようにしろよ、ただでさえコウ、お前は…」 「お前らに迷惑はかけないよ、もちろん石塚さんにもな」 「悪いな、俺はお前と違ってビビりだからさ」 「で…」 「何?」 「祥二は名前、知ってんの?」 「誰のだよ?」 「その元カレの名前だよ」 「甲斐… 確か、甲斐とか言ってたな、隣の街じゃ割りと有名なワルらしい」 「そっか…じゃ、ちょっと探り入れてみるか…」 「聞く…って誰にだよ?」 「クソ野郎のことはクソ野郎に聞きゃわかるよ」 「まさか…」 「石田んとこだよ」 「コウ、お前…」 「何だよ」 「無茶はするなよ、あいつらはまだお前のこと…」 「俺も少しは大人になったから」 「どこがだよ!もう顔色変わってんじゃねえか」 面倒なことになりそうな予感がした。 祥二は親切心からの助言だったのだろうが 聞きたくもない話だった。 浩子がこの前、男子にイヤな思い出が 「…あるよ」と言ったのは このことだったのだろう。 それよりも僕は浩子の辛い過去を ほじくり返してしまったような気がして 何ともいたたまれない思いにかられた。 言葉にならない複雑な心境で家に帰ると 突然電話が鳴った。 「お正月、みんなで初詣行かない?」 浩子からだった。
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