31. 目前

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「田仲浩子に質問!」 「ぷっ、何よ?改まって」 浩子は珍しく笑顔で僕を見た。 「浩子は何で俺にはフツーに笑顔で話してるの?って、男子連中が言ってるらしいけどその真意は?」 「知りたい?」 「そりゃ、ちょっとはね」 「あんたのこと…」 「なになに?」 数秒の沈黙が続いた 浩子は何と答えるのだろう? 鼓動が高鳴る。 「…男子だと思ってないから!」 「そっかぁ…って、マジかよ!」 「うそうそ」 「正月早々寝込むところだった」 「前にも言ったでしょ、あんたがちょっといいヤツだから…だよ」 「そっか、へへ」 「何?ニヤニヤして気持ち悪い」 「他のヤツらは…いいヤツじゃないんだ?」 「さあ、どうだろ?」 「そこ大事」 「どうでもいいよ、あんたそんな事気にしてんの?」 「いや、別に」 「なら、いいじゃない。アタシはあんたとは話す、それだけだよ」 「じゃ、ま、いいか」 「え?いいの?」 「どっちだよ」 「どっちがいい?」 「うーん」 「そこ悩む?『浩子が笑顔なら俺はそれでいいよ』くらい言えばいいのに」 「言うの?俺が?それで浩子が喜ぶ?」 「ううん、鳥肌モノ、ゾワワ~ってなる」 「それなら言わせんなよ」 「でも…たまには」 「たまには?」 「何でもない」 この機を逃すまい、と僕は勇気を振り絞った。 「浩子が笑顔なら俺は、そ、そ…」 「ぷっ!やっぱ無理!」 「だよな、がんばったんだけど…」 このタイミングじゃないな、と この日も勝手に自分の中で完結してしまった やっぱり今日もダメだった・・・
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