32. 再び

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トモキだった。 「谷口…何で?」 トモキは終始目を伏せたまま無言だ。 「こないだコイツを見かけたんでちょっとビビらせたら全部喋りやがった、知ってることを全部話したら…」 「何よ?」 「浩子との間を取り持ってやるぞ、って言ったら…チョロいもんだよ」 「谷口…お前、騙されてんだぞ…最低ヤロー、死んじまえ!」 「ああぁ、また浩子に嫌われちゃったな、じゃやっぱり浩子は俺のもんだ」 「え?そんな話、ありかよ」 「しょうがねぇじゃねえか、お前は『また』嫌われたんだからよ、同じ女に2回フラれるのはどんな気分だ?」 「くそ、騙しやがって!」 自暴自棄になったトモキは甲斐に飛びかかったものの 敵うはずもなく地面にねじ伏せられた。 「俺に歯向かって勝てるわけねぇだろ、バカが」 「う…」 「まあ、気が向いたらまた会いに行ってやるからよ、お前の周りをうろちょろしてる男がいるんなら気を付けとくように言っとけよ」 「何言ってんの、そんなのいるわけないでしょ!」 「それなら好都合だ、俺もなるべく手荒な真似はしたくねぇからな」 「消えて、今すぐ!」 「おぉ怖い怖い、そんじゃお前と仲良しのかわい子ちゃんにもよろしくな」 「美月は関係ない、もしも美月に何か…」 「まぁとりあえず、そのうちお前とよりを戻してやるよ、断るんなら、あのかわい子ちゃんにはまた痛い目に…」 「う、うっ…甲斐」 甲斐は憎々しい笑みを浮かべながら トモキを連れて去っていった。 あぁ何でこんなことに… 谷口だ、あいつが全部 今のアタシのこと話したんだ。 でも、あの様子だとタカムラのことは 話してないみたいだった。 どうしよう、こんなこと美月に話せない。 それだけじゃない このままじゃ タカムラまで甲斐に狙われてしまう。 どうしよう…どうしよう? 一人でこれだけの事態を抱え込むには あまりにも無力だった。 「もう…嫌だ、あんなの」 あの悪夢のような日々を思い出すだけで 浩子の全身から血の気が引いていった。
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