04. 黎明

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夏休みが終わり2学期が始まった。 とは言え、僕たち国立文系選抜クラスは 毎日補習があったため お盆以外は普段通り通学していた、 唯一の救いは午前中で補習が終わることだった。 その間も僕の周りの席は相変わらずで 新クラスになって4ヶ月が経過していたが 未だに後ろの席の浩子とは何の会話もなかった。 こうしてこのまま1年が過ぎていくのだろうか? そんなことすら考えざるを得ない 新学期初日のことだった。 僕は配られたプリントを振り向かずに そのまま手渡そうとして あ、後ろの席は浩子だった、と気を取り直し 振り返って渡そうとしたその時、 想定外の出来事に一瞬目を疑った。 前を向いたまま後ろ向きに手渡したプリントを 初めて浩子がスッと受け取ってくれたのだ。 最初は「え?」となった。 まあ、それも浩子の気まぐれだろうと さほど気にも留めず授業を受けていると 目の前に消しゴムが転がってきた。 可愛げなキャラクター物のその消しゴムは… 浩子のものだった。 迷った・・・ 拾ってあげるべきなのか、放置しておくか 何故なら浩子は今日も僕の椅子の後部に 足を乗せているからだ。 動きたくても動けないし 何よりもこの状況でなぜ僕が浩子のために 消しゴムを拾わなければいけないんだ?と言う 小さな反抗心が 僕の心を支配して行動を抑制させていた。
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