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そんな葛藤と戦っている最中に
「ねえ…」
後ろから声が聞こえた。
誰の声かわからなかったので
僕は聞こえないふりをして無視していた。
するともう一度
「ねえ、ちょっと…聞こえてる?」
すぐ後ろから聞こえた声の主は浩子だった。
あの浩子から声をかけられたことで
驚きのあまり振り返った僕の目の前には
今まで見たことのない笑顔の浩子がいた。
笑顔と言うよりは
どこかおどけたようなはにかんだ表情だった。
「え?俺?」
浩子は僕を見て小さく頷いた。
こんな形で初めての接点が生まれるとは
思ってもいなかった。
これが記念すべき初めての会話になる?
何て言葉を返せばいい?
早く消しゴム、拾ってあげなきゃ…
他の誰かに拾われる前に。
僕の鼓動はこれまでにないくらい高鳴っていた。
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