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その後は思いの外、会話が弾み
気が付けば時計の針は19時になろうとしていた。
「そろそろ出よっか」
「うん」
店の外は少し夕陽が傾きかけていて
下校する生徒達の姿もまばらになっていた。
ようやく僕たちは
周りの視線を気にする必要もなくなり
気づけば二人並んで歩いていた。
「家まで送って行こうか?」
「あ、いいよ…ここでいいよ」
「そう?でも、もう暗くなるよ」
「じゃ、あの向こうまでお願い」
「意味深」
「何がよ」
「じゃあさ、あの鉄橋のとこまでね」
「うん」
僕たちは川沿いの土手を
自転車を押しながら二人で歩いた。
いつしかお互いのその歩幅は
少しずつゆっくりになり
まるでこの至福の時間が終わるのを
惜しんでいるかのようだった。
そう思っているのが僕だけでなく
浩子もそうであってほしい、
そんなことを考えていたせいか
ここに来て僕たちは沈黙が続いていた。
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