07. 接近~アプローチ~

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「タカムラ、あんたさ…」 「何?」 「音楽好きなんだよね?」 「まあね」 「アタシも」 「そっか、いいこと聞いた」 「何よ、それ」 「俺、バンドやってるからさ」 「知ってる」 「何で?」 「誰かから聞いた」 「へえ、そうなんだ」 由里だろうか? 普段はお喋りな彼女だけど、もしも由里なら なかなかいい仕事をしてくれた。 「気が向いたらライブでも…」 「行かない」 「早っ!」 「うそ、行ってあげてもいい…よ」 「音楽の話もさ、また今度」 「そうだね、また…ね」 「たまに素直になるんだな、浩子でも」 「…バカ!」 「そしてすぐ怒る浩子」 「…怒ってないよ、バカ!」 言葉ではこんな感じだが 実際、口調は全く怒っていない 笑顔の浩子 今まで見たことがなかった浩子の姿を ここで僕だけが見ている。 「じゃあ、ここで」 「うん、ありがと」 「また…」 「また明日ね」 鉄橋の近くでお互いに手を振って 僕たちはそれぞれ別の道へと歩き始めた。
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