09. 季節外れの

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ある時、唐突に浩子は聞いてきた。 「アタシ、前から気になってんだけど」 「何?」 「よく怒られないよね、そのカッコで」 僕は別に不良ではない。 が、しかし外見は明らかに校則違反だった、 髪色も少々明るめの色だし ブレザーの制服もネクタイは緩めで スラックスの幅も学校指定の物とは微妙に違う。 明らかに公立高校の進学クラスには 不似合いな外見だった。 「一応ここって進学クラスだし、これまでに指導された事ないの?」 「あ、服装検査ってさ、先生が生徒の自己判断で通過させてるから 自分に違反の意識がなかったらスルーしても 怒られないんだよね」 「自己基準、低っ!」 「それなりに成績よけりゃ何も言われないんだよ」 「確信犯なのね?」 「ポリシーってやつだよ」 「どうでもいいよね、美月」 「うん…いいと、思うよ」 「ほら」 「中邑ちゃん、その『いい』はどうでもいいの『いい』じゃないよ、ね?」 「どうでもいい、の『いい』だよ」 「ははは、ほらね」 最近では僕と浩子の会話に 美月や由里が加わることは 珍しいことではなくなっていた。 トモキと例の話をしてから 既に数日が経過していたが あれから特に何もなく平穏な毎日だった。 僕が望んでいるのはきっと この穏やかで平和的な空気なのだろう。 でも裏返せば そこから進展が望めないのはわかっている。 それよりもこの儚い幸せを 知らず知らず僕は選んでいた。
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