09. 季節外れの

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「何か、かたつむりみたいだね」 「何が?」 「待ってる…だけでいいのかな?」 「美月が?」 「ううん、何でもない」 「よくわかんない、美月の考えてること」 僕は相変わらず由里とかたつむりの話。 「由里ちゃん知ってる?マイマイカブリって?」 「えー?何それ」 「かたつむりを食べるんだよ、ほらこの殻に頭を突っ込んで。その姿が帽子みたいだからそんな名前」 「ガブガブ食べるの?」 「いや、溶解液を出して溶かしながら…ドロドロと…」 「いやー!」 「あ、ほら、由里ちゃんの足元に…!」 「きゃー!」 由里とふざけていた僕には 浩子と美月の会話は全く聞こえていなかった。 例え聞こえていても その言葉の意味は理解できなかっただろう   浩子ですらわからなかったのだから。 いや、浩子は敢えてわからないふりを していただけだったのかも知れない。
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