10. 誕生日

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季節は巡りすっかり秋らしくなっていた。  気づけばこの日は僕の誕生日だった。 去年の今日は男子だけで牛丼を食べに行った… そんな寂しい思い出しかなかったが 今年はどうなんだろう。 まさか「今日は誕生日です」なんて 自分から告知してまわるわけにもいかない。 そんな時、助かるのはおせっかいな友人の存在。 「コウ、今日は飯でも食って帰るか、誕生日だろ?」 切り出したのはテルだった。 「あ、いや、今日はやめとくよ」 「用事でもあるのか?」 「いや、そうじゃないけどさ、ちょっと行きたいとこがあってね」 「そっか、じゃあ来年だな」 別に用事があるわけではなかった。 今年は友達と過ごすより一人で、と言うのは あくまでも名目で 本当は「何か」に 期待していたのかも知れない。
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