10. 誕生日

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男女数人で食事に向かう道すがら 「あ!」 僕はふとあることを思い出し おもむろに近くの公衆電話へ駆け込んだ。 「何してんの?」 公衆電話のボックスから出てきた僕を見て 浩子は不思議そうな顔をしている。 「今日の晩飯、いらないって連絡」 「ぷっ、意外とマメ」 「うるさいおかんだからね」 「コウ、ちょっと、次の練習なんだけど」 僕はテルに呼ばれた。 浩子の隣には実優がいた。 「浩子ちゃん、高村くんとこは母ひとり子ひとりの家庭だからお母さんの事、気になるんじゃない?」 「そうなの?実優ちゃん、よく知ってるね」 「幼稚園の頃から一緒だから」 「そうなんだ…」 「うん」 「あいつってさ…」 「何?」 「昔からあんな感じ?」 「あんな…ってどんな?」 「えっと…何て言うか、見た目と中身のギャップって言うか…お人好しそうなのに妙に自信持ってたりとか」 「高村くんは全然変わってないよ、こっちに帰ってきてからも、その前も…」 「こっちに帰ってきてから?」 「うん、元々こっちの人だったんだけど 家庭の事情で一度関西に引っ越して 中学3年の終わりにまた戻ってきたんだよ」 コウからその話は聞いたことがなかった。 何でも話してくれるタカムラが アタシに話さないってことは きっと深い家族の事情があるんだろうと 浩子は思った。
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