12. 約束

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お店を出たのは8時過ぎだった。 男子は男子、女子は女子で それぞれ帰るはずだったのだが 美月一人だけ帰り道が逆だった。 「あ、私ひとりで帰れるよ…」 「ちょっとタカムラ」 「俺?」 「あんたさ、今日誕生日なんだから送ってってあげたら?」 「意味がわからんぞ、浩子が言ってることの」 美月と浩子の家は近くだと聞いていたので てっきり一緒に帰るものだと思い込んでいた。 やはり浩子はあの方角から帰りたくないから 遠回りして帰るつもりらしい。 やはりきっと何か大きな理由があるのだろう そう思わざるを得なかった。 美月が期待に満ちた表情で僕を見ている。 「え?ほんとに?高村くん」 「ほら、美月もああ言ってることだし」 「わ、わかったよ」 別に美月を送っていくことに問題はなかった。 ひとつだけ気になったのは 何故浩子が僕にそうするよう言ったのか、だ。 僕なら大丈夫、だと思ったのか それとも… きっと浩子は何も考えていない、 考えているとしたら僕のことよりむしろ 美月を気遣ってのことだろう。 今日の帰り道は 浩子と一緒だとたかをくくっていた 僕の算段が外れたことと 浩子への後ろめたさのような気持ちが交錯して なかなか返事をすることが出来なかった。
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