01. クラス

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ここ2、3ヶ月の間 明らかに祥二の席は「固定」されていた。 彼の席の近くには必ず 例の我がクラスのマドンナ 由美子の姿があった。 他のヤツらが気づいていたかどうか? おそらく鈍感な男子どもは 誰一人気づいていないのだろうが 僕はすぐに気づいてしまった。 「席替え委員」智久と僕は 1年の時から同じクラスだった。 意外と言っては何だけど仲は良かったので ある日、僕は智久に聞いてみた。 「祥二と石塚さんってさ、何で毎月席が隣なの?」 「…気がついたんだね」 それで全てを察した。 席替えのくじ引きは 智久が意図的に操作していたのだ。 男女の席だけではない、 女子の仲良しグループも席が近くなるよう 頼まれていたのだと言う。 そう言う事だったのか… 「コウちゃんは気になる女子とかいないの? 僕に言ってくれたらうまくお膳立てするよ」 智久はそう言って笑った。 何て事だ… 人生には「奇跡」や「運命」なんて 言葉があると信じてたのに それらは全て仕組まれていた事だったのか 偶然を装った 必然的な「出来レース」だったのか。 「現実」を知り、何だか虚しい思いになった。 「うん、また気になる娘がいたら相談する」 「わかった、いつでも相談乗るから気軽に… あ、見返りなら要らないからね」 道理でいつも僕の周りには 気になりそうな女子がいないわけだ。 必然的な流れで祥二と由美子は交際を始め 僕たちは一緒に下校する友人を一人失った。
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