17. 失意

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そこには浩子がいた。 それも一人ではない、 見たことのない男と二人でいる。 そして浩子は楽しそうに話しながら そのまま校門の向こうへと消えていった。 「嘘だろ…」 理由など聞けるわけがない (とが)める権利があるわけでもない なぜなら 僕たちは付き合っていないのだから。 そして今日は浩子の誕生日、 例え「約束」の前に別の誰かと会っていても 決して不思議なことではないだろう。 そう割り切ってみたところで気持ちは正直だ。 浩子はだと高を括っていた 僕のこの落ち込みようときたら… 既に浩子に問いただす気力すら 今の僕には残されていなかった。 頭の中が真っ白になった。 浩子は普段、楽しそうに話してくれてたのに 裏ではあんな奴と関わっていたのだろうか? いや、これまでの浩子との関わりなんてのは 所詮、僕の自己満足だったのだろう。 もしかしたら僕の事を話題にして 笑い者にしていたのかも知れない などと考え始めたら何もかも嫌になった。 誰も信じられなくなった。 この後、僕はどのように行動して 何処に向かったのか全く記憶がない。 思考能力が完全にストップしてしまった。 気が付けば一人で土手の上に あの日、浩子を送っていったあの場所に 僕は座っていた。
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