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少しずつ事態が飲み込めてきた。
「浩子、そんなに喜んでた?」
「うん、『今年の誕生日は楽しくなるかも』って」
「『今年』の?」
「あ、いや、それは…なかなかそう言う機会がなかった、んじゃない?」
「浩子は由里ちゃんにだけそんな話したんだ?」
「そうだよ、美月になんて言えるわけないじゃん」
「え?何で?」
「何で、って…あぁ、そんなことより浩子に謝る練習でもしといたら?」
「あ、そうだった…」
「じゃ、明日は頑張るんだよ」
「…はーい」
「じゃ、先輩お疲れっすー」
「お!…ってそもそもお前がだな!」
腹いせにヒロシの頭を
思い切りひっぱたいてやった。
「あ、痛っ!ゆり姉さーん!」
「だから、『ゆり姉さん』はやめてって!」
ヒロシは由里にも頭を小突かれていた。
「こりゃ、先が思いやられるな…この二人」
そんな僕を横目で見ながら呟いた
由里の独り言は僕には聞こえなかった。
「男って、何であんなに鈍感なんだろうね、色んな意味で…」
「もしかしたら…」
僕は慌てて浩子と約束していた
ファーストフード店へ全力で向かった。
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