18. 早計

6/7

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
少しずつ事態が飲み込めてきた。 「浩子、そんなに喜んでた?」 「うん、『今年の誕生日は楽しくなるかも』って」 「『今年』の?」 「あ、いや、それは…なかなかそう言う機会がなかった、んじゃない?」 「浩子は由里ちゃんにだけそんな話したんだ?」 「そうだよ、美月になんて言えるわけないじゃん」 「え?何で?」 「何で、って…あぁ、そんなことより浩子に謝る練習でもしといたら?」 「あ、そうだった…」 「じゃ、明日は頑張るんだよ」 「…はーい」 「じゃ、先輩お疲れっすー」 「お!…ってそもそもお前がだな!」 腹いせにヒロシの頭を 思い切りひっぱたいてやった。 「あ、痛っ!ゆり姉さーん!」 「だから、『ゆり姉さん』はやめてって!」 ヒロシは由里にも頭を小突かれていた。 「こりゃ、先が思いやられるな…この二人」 そんな僕を横目で見ながら呟いた 由里の独り言は僕には聞こえなかった。 「男って、何であんなに鈍感なんだろうね、色んな意味で…」 「もしかしたら…」 僕は慌てて浩子と約束していた ファーストフード店へ全力で向かった。
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加