魅惑の口紅

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 私は今日20歳になったJDだ。私はこの日あることを決断した。             「死のう。」と。  私は昔から顔が大きく、肌もにきびが目立っていて周囲の男子からは影で「ジャガイモみたいだ。」と陰口をよく叩かれていた。そのような外見のため、積極的に好きな男子に告白をしてきたが結果は苦杯をなめてばかりで、彼氏いない暦=年齢でここまでの人生を過ごしてきた。さらに、私が男の子にあまり好かれていないせいか女の子も私とあんまり仲良くしようとはせず、心から話せる友達が一人もいない。だから、誕生日を家族以外に祝ってもらったことは一度もなく、当然今日も誰かにプレゼントをもらったり、20歳になった記念にお酒を飲みに行くことなく、いつものようにベットでゴロゴロしながら本を読んでいる。今読んでいる本の内容は「病気で死んだ男の子が20年後に別の男の子に生まれ変わって当時付き合ってた女の子と偶然出会って結ばれる。」というものだった。そして、本を読みながら私はふと薄暗い天井を見上げながら、一人でつぶやいた。  「来世かー・・・。生まれ変われたらもっと普通の顔で生まれてきて、今とは全く違う人生を送れるんだろうなー。もしかしたら、今の私の人生は30、50、70歳になってもこうやってずっーとベットで本を読んでるだけなのかな。デートとか友達同士で旅行とかしないまま人生が終わっちゃうのかな。いや、絶対そうよ。20年生きてて、友達と遊びに行ったことさえないもの。今の私の人生はずっとこのまま。本を読むだけの退屈な人生よ!よし、決めた。今の私の人生を終わりにしよう。来世で人生を満喫しよう。こんな顔でも文句ひとつ言わずに勉強も真面目に頑張ってきたし、家の手伝いもいっぱいしてきたし、きっと神様は私に最低でも人と付き合えるぐらいの顔を与えてくれるはずよ。そしたら、友達通しで誕生日会を開いて夜遅くまで騒げたり、彼氏とディズニー旅行にだっていけるわ!あーなんでこんなこと今まで一度も考えてこなかったんだろう。」   そして、私はそんな期待を抱きながら、今晩、『自殺』を決行することを決めた。  午前二時私は自分の家から少し離れた今は廃墟となって立ち入り禁止になっている7階建てのAマンションの屋上にきていた。私は、柵へとゆっくりと歩みを進めていき、柵をよじ登って、目の前に足場がない状態のところまで来て立ち止まった。いよいよ「人生が終わる。」ときがきた。私の人生の大半が一人で無味乾燥な人生だったが、いざ死ぬとなると数少ない楽しかった思い出が蘇ってくる。家族で1週間オーストラリアに旅行しに行ったこと、逆上がりの練習をお父さんが毎日のように付き合ってくれてできるようになったこと、テストでいい点数を取ったらお母さんが毎回私の好きなハンバーグを作ってくれたこと、家族で1週間オーストラリアに旅行しに行ったことなど主に家族との思い出が次々と頭の中からこみ上げてくる。       「最後に感謝の気持ちだけでも伝えなくちゃ。」  そう思って、携帯をポケットを取り出して家族のグループLINEに今までの感謝の気持ちと自分がこのようなことをしたのは決してお母さんとお父さんのせいではないということを今まで綴ったことないほどの文量で綴った。そして、私は携帯をポケットにしまい、静かにゆっくりと深呼吸をして決意した。『今から飛び降りる』ことを。         「5、4、3、2、1、0で飛び降りよう。」  そう思い、また静かにゆっくりと深呼吸をしてからカウントダウンを始めた。           私「5、4、3、2、1・・・」 カウントが1のところまできた時、空一面が真夏の太陽のような明るさでピカッーと光り、           ???「ストーーープッ!!」 といいながら、誰かがものすごい速さで空高くからやってきて、私の目の前で止まった。その人は私と同じぐらいの年齢に見えて、きれいな琥珀色のロングヘヤーで、瞳がビー玉のように大きくて、スタイルも漫画のヒロインに出てきそうなほど抜群である。私が知っているどの女優やモデルよりも美しくて、これに惚れない男子はいないだろうと思うほどだ。あまりの容姿端麗に気をとられていたが、よく見ると背中に大きな白い羽がついており、中に浮かんでいる。天使みたいである。すると、その超絶美人天使が私に向かって言った。  超絶美人天使「あなた、今死のうとしていらっしゃいましたね?空から見ていましたの。なぜ死ぬおつもりかも知っていますよ。生まれ変わりたいとお考えですよね?」  私「えぇ。まぁ。で、あなたはだれです?天使さんかなにかですか?」  超絶美人天使「えぇ!そうよ!よくわかりましたわね!!神様に頼まれてきましたの。神様はまだまだ希望のある若者が自ら死のうとしていることを止めるために私たち天使を遣わすのです。神様はお優しいですから。」  私「なるほど・・・。一つ聞きたいことがあるのですが、本当に生まれ変わることってできるんでしょうか?」  超絶美人天使「生まれ変わることはできますわ。ただ、時間がものすごくかかるのです。というのは、生まれ変われさすことができるのは神様だけで、神様一人が、何億、何兆体もある生命体を生まれ変われさしているのです。今からですと、死んで生まれ変われるに早くても1000年近くはかかってしまいます。やっぱり死ぬおつもりですか?」  私「はい・・・。何年かかっても生まれ変われるなら死のうと思います。今の私の人生に希望も楽しみもありませんから。」  超絶美人天使「自分のお顔にコンプレックスを持っていらっしゃるようですね。十分お美しいお顔ですのに。そこで私、あなたのコンプレックスをきれいさっぱり吹き飛ばしてしまうあるアイテムを持ってきましたの!これを開けて見てください!」  そう言って超絶美人天使は服の内ポケットから小さい桐箱を取り出して私に手渡した。そして、わたしはそれを受け取ってこの中に何が入っているんだろうとドキドキしながらそっと開けて見た。するとその中には小さな赤い口紅が一本入っていた。私は天使からもらえるものだから、ニキビなどの肌荒れが一瞬で消えて雪のような超美肌になる特殊な塗り薬や顔が一瞬でリカちゃん人形みたいな小顔になれる特殊な小顔ローラーみたいなものが入っていると思っていたから少しがっかりした。  私「こ、これがそのアイテムですか・・・?」  超絶美人天使「そうです。これは老若男女問わず全てを魅了する『魅惑の口紅』と呼ばれる口紅です。これをつければ、男の子も女の子もあなたの虜になること間違いありません!一度つけてみてください!」 私はそう言われ、口紅一つで変わるなら今までこんな苦痛を味わってきてないと思いながら、桐箱からその『魅惑の口紅』とやらを取り出し、口に丁寧に つけてみた。  超絶美人天使「一度鏡で自分のお顔をご覧になってください。」 超絶美人天使は内ポケットから今度は手鏡を取り出し私に渡してくれた。そして手鏡でその口紅をつけた自分の姿を見た瞬間に衝撃が走った。私の唇は今までみたことのないほどきれいな真っ赤っかな純白の赤でダイヤモンドの100倍ぐらいの輝きを放っていた。あまりにも輝いていて周りの肌や鼻や目までも顔全体が輝いているように見えた。顔の大きさや肌荒れがまるで気にならないほどに。           私「美しい・・・。」 あまりの美しさに思わず声が出てしまうほど私の顔とは思えないほど私の顔は美しく見えた。  超絶美人天使「気に入ってもらいました?」  私「はい!本当にありがとうございます!私、もう一度人生頑張ってみようと思います。この口紅なら本当に誰も私を避けることなく、今とは全然違う私がずっーと思い描いていた楽しい普通の女の子らしい人生が送れると思います!本当に本当にありがとうございます!!」  超絶美人天使「いえいえ。こちらこそもう一度生きるということを選択してくれたことを嬉しく思いますわ。ありがとうございます。その口紅は無くさない限り何回でも使えますので、大切にしてくださいね!それでは私は別の仕事がありますので、ここで失礼させていただきます。さようなら!」 そう言って、超絶美人天使がものすごいスピードで天まで昇っていき、やがて見えなくなったころに真夏の太陽のような明るさは静かに消え、真っ暗な世界へと戻った。           私「天使はやっぱり天使だ。」  私は空に向かってそう呟き、家族に送ったラインを送信取り消しし、小さな桐箱を大切に両腕で抱え、これから先の人生を想像しながら、ルンルンと家に帰った。           私「明日は早く学校に行ってみようかな。」             
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