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き・し・ん12
その晩、舞は恐ろしい夢を見ていた。
学校帰りに何時もの通り源達と別れ自宅に帰ろうとするが、いくら歩いても家につかない。足は痛くなり踵には血が滲んでいた。
わけもなく恐くなり泣きそうになると、後ろから笑い声が聞こえた。
女の子?いや違う
笑い声の中に濁った男の様な声も混ざる。
それは言った
「遊ぼうよ」
恐すぎて駆け出そうとするが、足がもつれて上手く前に進めない。
「助けて。お母さん」
声に出そうとしたその時
「みーつけた」
ざくり、何かが突き刺さる。
激痛、右手に何かがたかっている。
恐る恐る見ると無数のカラスが肩にくちばしを突き刺し、肉をえぐっていた。
「ぎゃー」
悲鳴
「どこり」
何かが地面に落ちた
舞の右腕、溢れる血飛沫…
次は左の腿に、薄れていく意識の中舞は見た
おかっぱ頭で薄汚れた着物を着た「それを」
「楽しいねお姉ちゃん」
全身に冷や汗をかき、舞は飛び起きた
心臓がドクドクと脈打つ。
回りを見渡すと、そこは彼女の部屋で
ベッドの上だった。
なんだ夢か、それにしてもやけにリアルな夢だった。激痛、血の匂い、カラスの鳴き声、そしておぞましい「それ」の姿。
「いた」
右肩に痛みが走る、驚いて着ていたTシャツを脱ぐとそこに赤い無数の点が
「きゃー」
舞は気を失った。
「どうした」
階下から聞こえる父と母の声、慌てて階段を駆け上がる音。
時計は3時を指していた、魔の時と呼ばれるその時刻を。
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