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き・し・ん23 戦い 対峙
再び
「ドーン」と凄まじい音がして、体育館の方角から校庭が割れていく。
まるで意思を持った巨大なミミズが地を這う様に如月に向かって。
舞が
「気を付けて」
と叫んだ。
正義と源は今までで一番恐ろしい物を見た。
「ごぼり」と嫌な音を立てて、割れた地面の中からズルズルと這い出てくる畏怖の存在。
異臭が鼻をつく、思わず正義は口元を押さえた。吐き気を堪えるために。
如月は微動だにしない、「それ」は薄汚れた着物を着て絡まった長い髪の毛をゆっくりとかき上げる。目はあり得ないほど大きく、暗い洞穴の様にグニャグニャと動いていた。口は真っ赤にぬらぬらと光り、手の爪は地面に届く程の長さだ。
あれが「邪鬼」
正義は「守り」を握りしめた。その瞬間「邪鬼」は彼等に視線を向けた。
舞が苦しそうに首を押さえた。
「あーーーー」
如月が右手を振る、「バシ」何かが切れた様な音がして舞は深呼吸をした。
「死ぬかと思った〜」
驚いて源が舞の首を見るとクッキリと手の跡が付いている。
「お前の相手は我だ、さあ始めよう因縁の対決を」
「ご、ごりょ、ごりょず」
邪鬼は言う、正義はそれが「殺す」と聞こえた。
ざっと突風が吹く、その凄まじい力でサッカーゴールが横倒しになる。
邪鬼が大きな皺だらけの手を横に振っていた。「ガッ」音と共に邪鬼の姿が消えた、如月の髪の毛がパラリと地面に落ちた。
直ぐ後ろに邪鬼が立っていた。
すかさず長い爪を如月の体目掛けて振るう。
余裕なのか、数歩右に避けその手を掴んだ。
あの力だ、バスケのボールを掴んだ。
「グッ」邪鬼が片膝を地面に付いた。
次の瞬間信じられない事に邪鬼の体は吹き飛び倒れたサッカーゴールに激突した。
グニャリ、鉄の枠が歪む。
やったのか、源がそう思った時今度は如月の右手があらぬ方向に捻れた。
だが顔色一つ変えることなく、左手で邪鬼の髪の毛を掴み今度は空中に放る。
舞達に聞こえるほど大きな声で
「力は相変わらずだな邪鬼よ、だが我は負けぬ」
凄まじい砂埃。「ドン、ドン」と校舎を揺るがす音と共に校庭に重機で掘った様な穴があく。力と力。片方は人間を守るため、片方は人間を喰らうため。
ブンと如月が右手を振ると、手が元の形に戻った。
空に放られた邪鬼は感じていた「鬼神」の力を、だが「ゴボゴボゴボゴ」と不敵に笑いながらその姿を消した。
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