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うつり木 2
その話が社内で持ち上がったのはつい最近だった。
幹線道路をずらし、そこに新たな商業施設を建てると。
丸川は小声で「あの木かぁ」と言った。
佐藤も横で「爺様から聞いた話では、関わりたくないプロジェクトだよな」
営業三課の面々は今や「天の川建設」を支える柱に成長していた。
斬新な企画、地元との信頼関係、政治を通さないで利益を上げている。
月上は言った「ヤバイかもね、二年前に鏡建築があの木を切ろうとして重機が横倒しになってるから」
佐藤も「祟りか、神木にまつわる噂」と週刊誌の見出しが脳裏に蘇る。
丸川は「関わりたくないけど、今度は本気だな」とプロジェクターがスクリーンに写しだす5億の数字を指差していた。
このプロジェクトに関わる予算を。
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