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うつり木 5
天の川建設の三人は現地調査に来ていた。
数日前の事故の件は社内にあっという間に広まり、案の定騒がない様に各部署に通達された。
月上が「やっぱり気味が悪いよね、なんか空気がどんよりしてるというか」
丸川は「やめてくれ、マジで怖いんだから」
宥める様に佐藤が「まあ、あまり気にしないで俺達は仕事するしかないよ」
そう言いながら先週の日曜に神社で購入した「お守り」をそっと鞄に忍ばせていた。
「木」は三人を見ていた、いや正確には認識していたと言う方が近いのかもしれない。
三人の若い魂はこの上ない御馳走だからだ。
「なんだこのコブ」丸川が木に近付いて指差す。
月上と佐藤は駆け寄った。
何かの病気に犯されているのか、不規則に拳大のコブが突き出ていた。
風が吹いた、その瞬間丸川は耳元で
「ぐる」と呻き声の様な声を聞いた。
「ひっ」と短い悲鳴を上げたので月上が「どうしたの、何かあった」と聞く。
佐藤は感じていた、あまりこの場に居てはいけない、それは生存本能とも言える彼の根幹からきていた。
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