うつり木 12

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うつり木 12

水川は一人静かに庭を見つめていた。 古い日本家屋。不規則に並ぶ丸石、真ん中に小さな池、適度な草や花、見る人が見ればそれが全て「感知機能」を備えていると分かるだろう。風がない日に池の水面が揺れる、雨が降らないのに丸石に染みが浮き出る、草や花が病気でもないのに枯れる。 全ては「邪」が動く時に起こる気配。 水川のレベルならばそんな物は必要ない気がするが、彼は最近の「ザワツキ」が気になっていた。普通の人は気が付かない怪異が頻繁に起こっている。 今夜は月が赤い。水川はすくっと立ち上がり「おん」と叫んだ。 「ざぶり」と池の水が ざ わ つ い た。
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