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うつり木 14
沙織は考えていた、いや、感じていた。
自分が吹き飛ばされた時に見えた「あれ」のことを。
初めは車のライトが枝に作った影だと思った。だが彼女は今一つの結論に達していた。
人だ、あれは人の影だ。
長く太い幹にぶら下がるように「あれ」は揺れていた。白いシャツにチャックのスカート。長い髪の毛、空な目。凄まじい寒気が全身を駆け抜ける。一瞬の出来事なのに脳裏に焼き付いていた。悟さんに電話するべきか迷う。いや、今はやめておこう。悟さんも「力」を使った。私を守るために。
背後から守られた時に彼は何かを唱えていた。だがその視線は「木」を真っ直ぐに見ていた。その時不意に沙織の部屋の窓ガラスが「ドン」と鳴った。「ひ」短い悲鳴と共に手に握っていた数珠を前に突き出す。どのくらい経ったのだろう、恐る恐るカーテンを開き窓に視線を移す。そこにはハッキリと人の手形が白い粉の様にベッタリと張り付いていた。
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