うつり木 15

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うつり木 15

建築会社の佐藤は部長に直談判していた。今回の「木」を切り倒し新たに道路を作る計画の中止を。初めは全く取り合わなかった部長も佐藤の話を聞くうちに顔色が変わってきた。確かに良くない噂はこの業界でも良く聞いた、でもそれは偶然が重なったと自分に言い聞かせこのプロジェクトを佐藤達に託した。 部長の野口は佐藤に「今から現場を見に行こうと」提案した。佐藤は時計を見た。針はもうすぐ明日が来る事を伝えていた。 「今からですか」気乗りがしない佐藤が言うと、野口は「現場を見て判断したいんだ、まさか霊の仕業で中止とかは上に報告できないから工事の危険性を訴えればと思って」 「ああ、この人も何かを感じているのだろう。自分の首が飛ぶかもしれないのに」 そう思い佐藤は深く頷いて「私が運転します」言うが早いが無造作に鞄をデスクの上から取り上げキーボックスから車の鍵を取り出す。そして誰もいない車内を後にして車に乗り込んだ。これから起こる恐ろしい事を知らずに。
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